マナイタの誤算
マナイタは、すやすや眠るアリスの横でせっせと袋詰めをしていました。
3色で1セットをあらかじめ作っておいて、オーダーが入れば封筒に詰めて送ればいいように準備をしていたのです。
そうすればアリスもお手伝いしやすいだろうと思ってのことでした。

また、マナイタはハンモック作りで培ったバランスのいい配色に自信があったので、このようにセットにすることで「売れるだろう」と踏んでいました。
メルカリに3色セットを公開し、しばらくすると、こんなメッセージが入りました。
そう。マナイタの自身があった配色はウケなかったのです・・・
「自分の欲しい色だけが欲しい」
そんな購入者の考えにマナイタは気づいていなかったのでした。
ライバルはどんな売り方をしているんだ?
ある日、マナイタは、アリスと一緒にメルカリの画面を見ていました。
アリスは、共同運営者として自分の商品の売り上げには興味がないようです。保育園ではお店屋さんごっこをしているそうですが、メルカリはバーチャルショップなので、実感として湧かないのかもしれません。
マナイタは、ハンドメイド素材を扱う出店者を中心に検索しました。すると購入者に好きな色を選んでもらっている出店者がありました。まずはメッセージで注文を受け、その注文者専用に商品ページを用意しているのでした。
マナイタはそう言って膝をたたきました。
マナイタの気づき
マナイタはさっそく売り方を変えてみました。色見本を作り、その中から選んでもらう方式に変更しました。

マナイタは、ちょっと恥ずかしい気持ちになりました。社会人を20年近くやってきて、商品の売り方を知らなかった自分を情けなく思ったのです。
一応、そうつぶやいて自己顕示欲を満たしてみようとしたのですが、誰も聞いていません。窓の外でカラスが「カァー」と一声鳴きました。
マナイタは自分が作ったハンモックを売る時にも同じ気持ちになっていました。まず商品の値段の決め方がわからないことに呆然としたのです。
マナイタは以前、営業職でした。当時は1台2000万円もするIT機器を売っていたのに、今では500円のヒモすら売れていません。
当たり前のことですが、新たな気づきでした。
はじめてのお客様
車から降りたマナイタは、スマホをチェックしました。メルカリアプリに通知表示がついていました。
マナイタはガッツポーズをした。初受注だ!
そしてアリスのもとに急いだ。
2人は急いで夕飯を済ませ、商品を引っ張り出しました。
商品の公開から、2週間も経っていたのでどこに締まっていたかも、ちょっと忘れていたほどでした。
メーカーの色見本をもとに、色に間違いがないかチェックをします。
色に間違いがないことを確認して、それを写真に撮りました。
そして、この注文者専用の商品ページを、マナイタが作ります。
その旨を注文者にメッセージすると、すぐに購入してもらえました。
これが2人にとって初めてのお客様になったのでした。
アリスのはじめての販売益
500円で買ってもらえたヒモは、送料や手数料を引かれて約300円。
マナイタとの契約で10%がアリスの取り分となります。
アリスは、マナイタから30円を現金で受け取りました。
お年玉以外でもらえた、はじめてのお小遣いとなりました。
そう、アリスはまだ物の値段というものを理解していないのでした。