自然学校に今、もっとも足りていないのはマーケット感覚です。
顧客ニーズを敏感に感じ取れていなくて、
元号が変わろうとしている今でも、
昭和丸出しの草花観察会をやっているでしょう。
草花観察会1.0とは
学芸員や、地域の植物に詳しいおじさんを講師にまねいた観察会のこと。
高山植物など特異な地域での植物紹介ツアーが(きっと)はじまり。
意外に街中の植物も知らないこと多いよね?知りたいわ。
という植物マニアのニーズを汲んで、今まで存続してきました。
そして現在もそんなマニアたちのために、各地で観察会が催されていますが、
興味ない人にとっては、箸にも棒にもかからない企画。
(ただし、参加してみると確かに面白かったりします)
提供している価値は「植物の名前を教えてもらえる」こと。
だからインタープリテーションではなく、インストラクションです。
もういい加減、1.0からは脱却したいけど、できないのにはワケがあります。
ボクが考える観察会2.0を阻む理由は3つあります。
①企画側のマーケット感覚の欠如
②植物職人が築く年功序列社会
③実は自然学校も年功序列社会
企画側のマーケット感覚の欠如
マーケット感覚については、こちらを読むのがおススメです。
草花観察会1.0は前述の通り「知識を教える」価値を提供しています。
それを欲しているのは、ごく一部の植物マニアです。
世の中の一般的なファミリーが
ある日曜の朝
「今日は〇〇公園で、植物の名前を教えてもらおう!」
「やったー!ボク、あの花の名前、知りたい、知りたい、知りたーい!」
ってならないですよね?
ちょっと想像すればわかるようなことなのに、
今も「初心者向け」として、観察会を開催している自然学校がなんて多いことか…。
これだけでは業界関係者にはあまりわかってもらえないと思うので
別の言い方をします。
・そもそも植物の知識を欲している層は少ないんです
・その層の初心者向けに、簡易観察会を毎年繰り返していますよね
・植物好きの初心者向けという超限定的な企画を「どなたでも参加OK」と言ってる矛盾わかります?
この辺が、マーケット感覚の欠如です。
ボクの提案としては、
①マニア向けなら、マニア向けにとことん掘り下げた企画に
②初心者、どなたでも参加OKを掲げるなら、その層のニーズを汲み取った企画を
していけばいいと思うのです。
植物職人が築く年功序列社会
こんな企画になってしまう背景には
講師サイドの社会性も影響しています
大学の研究室や、引退した理科の先生が講師を務めることが多いので、
「〇〇先生を差し置いて、私が人に教えるなんて」
という空気が一帯に立ち込めています。
参加者(こちらも植物マニア)も、
名のある先生が引率してくれることを喜ぶ傾向があって
同じ「こちらはカタクリです」というセリフでも、
名のある先生なら「あー!これがカタクリですか!」で
若いスタッフなら「知ってるわよ」と反応が180度変わります。
こうした観察会1.0社会を生きてきた人たち同士には
教えるー教えられる
先輩ー後輩
知ってるー知らない
を喜ぶ関係性が出来上がっているのです。
実は自然学校も年功序列社会
年功序列(入社年度)が大きな力を持つのは
自然学校も案外共通しています。
実際のところ、途中で退社して戻ってきたり、有給?ボランティア?など
ぐっちゃぐちゃなので、
年次が上がっていくとよくわからなくなってくるのですが、
特に3年目のみなさんには、あきらかな年次の差が見えていると思います。
こういった環境では新しい企画を(ましてや観察会2.0なんて)
提案することが難しいです。実際ボクもできませんでした。
どんなに言葉を選んで進めたとしても
前年と違うことをする=過去への否定
と捉えられてしまい
講師陣はおろか、身内からもそっぽ向かれてしまう可能性は
大いにあるのです。
このへんは、3年目スタッフがどうこうできる話ではないので
ぜひとも、管理職のみなさんに気づいてもらいたいポイントです。
しかし、管理職のみなさんは、そんな社会で育ってきた人たちなので、
課題として捉えてくれるか、課題と捉えても動いてくれるかどうかは、
ちょっとわかりません。
草花観察会2.0のアイデア
言ってばっかりでは申し訳ないので、2.0に向けたアイデアを書いておきます。
前述の「植物の知識を教える」観察会は、
googleや検索アプリを使えば間に合うようになります。
カメラで草花を撮れば、あっという間に教えてくれます。
これで先生のスケジュールを抑えなくても、観察会の開催が可能になります。
(ボクだったら、「アプリで歩こう植物観察」を企画して、スマホに不慣れな高齢者にスマホの使い方と、アプリの使い方をレクチャーするイベントにします。もう誰かやってるかもね)
自然学校スタッフは、インタープリターで、ファシリテーターで、コーディネーターで、カウンセラーです。さまざまな掛け合わせを考えてみましょう。
・植物観察でファシリできないか?
・植物観察とコーディネート業務はできないか?
・植物観察とカウンセリングは合わさらないか(←この中で一番相性良さそう)
ここから出たアイデアから、きっと観察会を大きく変える2.0が生まれるでしょう。
なんてったて、まだまだ前時代的な観察会なので。